100人で子育てをしてみて良かったこと ー「拡張家族」との出会い

こんにちは。


この「ふりかえる」というコーナーでは、私がひとりで子育てをしていた頃の様子をふりかえりつつ、皆さんといろいろなことを共有できたらと思っています。


その前に、今日は100人で子育てをしてとくに良かったことについてまずは振り返りたいと思います。


どうぞお付き合いください。


1.体と心がすこし楽になった


まず、子育てや家事の一部を誰かに頼ることで、心身の負担から少しだけ解放されました。


もちろん、当時家のなかで24時間稼働できる大人は私ひとりだけでしたし、夜中は完全にワンオペということもあり、すべてから完全に解放されるというわけにはいきません。それでも、月に何度か家事代行サービスを利用した日は少しだけ息抜きができて、子どもたちに向き合う心の余裕もいくらか増えたように思います。


また定期的に誰かと会うことで、心の負担が和らいだことも大きかったと思います。子育てについて相談できる人ができたことで、孤独が一瞬やわらいだり、個人的なつながりが心の支えになったり。この「ひとりじゃない」と思える感覚が、当時は子育てに向き合う原動力になっていたと思います。



2.親子にとって一生ものの出会いができた


また親子にとって宝物のような出会いに恵まれたのも、とても貴重な経験でした。


見守りボランティアさんと一緒に遊びに行ったこと。家事サポーターさんが息子に優しくしてくださったこと。クリーニング店のおじさんが子どもたちの手を握ってくれたこと。近所の床屋さんが「子は宝だ」と言ってくれたこと……。すべて、ひだまりのように温かな記憶として私のなかに残っています。子どもたちも、とくに長男はわりと鮮明に記憶に残っているようで、時々思い出話をしたりします。


「将来あんな風になりたい」と親子で思えるような素敵な方との出会いもありました。とくに我が家を訪問してくださっていた見守りボランティアのKさんは、今でも私たち親子にとってロールモデルのような方です。お人柄があたたかく、遊びの名人であるKさんがはじめて我が家に来てくださった日の夜、長男が満面の笑みで「Kさんみたいになりたい!」と言ったことをいまでも思い出します。


3.住んでいる街がもっと好きになった


そんな素敵な方々との出会いを通して、住んでいる街のことがもっと好きになりました。街を歩けば誰かに会えて、他愛もない言葉を交わせるのは貴重なことです。


知り合いや馴染みの場所が増えたことで、街に対する見方そのものも変わりました。

「あれはA君パパの居酒屋さん」「あそこはB君ママのお弁当屋さん」「あれはCちゃんのおじいちゃんの楽器屋さん、今日はいるかな……」というふうに、街中の建物やお店をみるたび誰かの顔が浮かびます。子育てがはじまったころ、街にあまり知り合いは多くありませんでした。でも100人で子育てをするようになってから、あっという間にご縁が広がっていきました。その道のりを思い返すと、自分でもびっくりしてしまうほどです。


もちろんすべての方と深いお付き合いがあるわけではありません。挨拶を交わす程度のお付き合いも多いし、お名前すら存じ上げない方もいます。それでも、たったひとこと言葉を交わせる関係がいつもそこにあるということ。そんな日々の積み重ねにより、住んでいる街を少しずつ心の故郷のように感じるようになっていきました



4.そして何より……子どもたちが楽しそう!


そして何よりもありがたかったのは、子どもたちが一番楽しそうに過ごしていたことです。


夫が海外に出発した直後は長男がかなり精神的に不安定になり、私も対応に苦慮していたときがありました。でも家に人を招くようになってから長男に笑顔が戻ってきました。カレンダーを眺めながら「次は誰が来てくれるかな~」と待ち望んだり、「次○○さんが来たらこんなことするんだ~」と楽しそうに思い描いたり。そんな長男の様子を見て、助けを求めることにして本当によかったと思いました。


私たちが出会ったのは「拡張家族」だった


こうして振り返って思うのは、あの一年間に出会った100人の方々は、私たちにとって「拡張家族」のような存在だったということです。


「拡張家族」(chosen family)とは、血縁や法的な関係の有無にかかわらず、絆をもとに暮らす人々を指す言葉です。自ら選んだ人たち同士でつくる新しい「家族」のかたちと言えるかもしれません。この言葉に出会い、私がこれまでやってきたことはこういうことだったのかなと思うようになりました。


もちろん当時は綺麗事で語れることばかりではありませんでした。30代も半ばを過ぎて、自分の弱さや未熟さに日々直面していました。心の余裕がなくなると息子にあたってしまうこともありました。理想からは本当に程遠い毎日でした。


それでも、そんな日々のなかで何か一つでもいいことがあったとすれば、新しい家族の形や自分達にとっての幸せの形を模索できたことです。この一年を通して、自分の行動ひとつで「家族」を増やしていけるということを知りました。


すばらしい出会いに恵まれた奇跡の一年を、私は生涯忘れることはないでしょう。そしてこれから先の人生、時間をかけて少しずつでもお返しができるよう、親子共々歩んでいきたいという思いを新たにしています。


そんな私たちにとっての「拡張家族」との出会い、そして彼らとの日々について、ここで少しずつ振り返っていきたいと思います。


100人で子育てをすることにしました。

メディア「100人で子育てをすることにしました。」は、 "弧育てから「公育て」、そして人との交わりのなかで子どもたちを育んでいく「交育て」へ" をテーマに、偶然出会えた誰かと手を取りあいながら、子育ての日々を紡ぎなおすことを目的としたメディアです。