【後編】ママのごきげんが世界を救う ―自分自身が一番ハッピーになれる状態を作って

ナカシマユウコさん(小学校教諭・2児の母)

愛知県で小学校教諭として働くナカシマユウコさん。子どもたち主体のお誕生日会を毎月開催するなど、子どもたちの「やりたい」にじっくり向き合ってきました。また担任として保護者にも寄り添い、長年にわたり親子の関係を見つめてきました。

現在は2児の母として、地域のさまざまな人と関わりあいながら子育てをしているナカシマさん。チーム育児への道のりを伺った前編に続き、後編では教員の立場から子育てについて思うことや、ママたちへのメッセージなどをお伺いしました。

前編はこちら:


親にもだれか寄り添ってくれる人が必要

教員としてさまざまな親子に関わってきたナカシマさんには、忘れられない出会いがたくさんあります。今でも印象に残っているあるお母さんとの出会いを振り返っていただきました。


「過去に担任したクラスの保護者の方で、子どもを5人抱えながら昼も夜も働いているお母さんがいました。たまに集金が落ちていないとか、お子さんの歯の治療が必要になったとかでこちらから連絡をするのですが、あまりに大変そうで頼みごとをするのも心苦しくて。でもある日、お母さんがふと『子どもが家で、クラスのお誕生日会の話ばっかりするんだわね』とおっしゃったんです。それを聞いて、この方とは話ができるかもしれないと思って。そこから少しずつコミュニケーションを重ねていくようになりました」


子どもたちだけでなく、保護者にも寄り添おうとするナカシマさんの気持ちを感じ取ったのか、お母さんも少しずつ心を開いていってくれたそうです。


「ご本人にくわしく聞いたわけではないのですが、そのお母さんは恐らくかなり複雑な過去を抱えた方だったんです。3学期くらいには、お母さんの方から少しずつご自身の過去について話してくださるようになって。そういう会話のなかで、少しでも励みになればと、私の方もいろんな言葉をかけていたんです。『ママが頑張っている姿はお子さんの励みになっていると思いますよ。学校でもよくお母さんのお話をしてくれます』とか、『頑張っているママを応援していない子はいないですよ』とか。正直、当時はそこまで実感が伴っていたわけではないんですけど、自分が親になってみて、本当にその通りだなって。頑張るママを応援していない子はいないと思います


子どもにとって一番いい道をすりあわせていくことが大切

子どもたちと日々学んだり遊んだりする中で、人間関係を築くスキルや学びに向かう姿勢などは、これまでの経験や家庭からの影響が大きいと感じるそうです。


「親と子は別の人間だとよく言いますよね。それは間違いないのですが、最も身近な大人である親の影響を少なからず受けているなと感じます。やっぱり家族は家族なんですよね。家庭の環境はそう簡単に変わるものではありませんが、お母さんやお父さんだって、誰かが寄り添って一緒に子どもの成長を見守ってくれるのなら、これまでとは違った見方や声のかけ方ができるのではないかと今は思っています。それにより、物事がよりよい方向に変わっていくことも大いにあると思います。教員と保護者の間でお互いが心地よいコミュニケーションを取り、子どもにとって一番いい方法をすり合わせていくことが大切だと感じます」


教員と保護者はひとつのチーム

保護者にできるだけ心を開いてもらえるよう、ナカシマさんには工夫していることがあります。


「なにかあったらすぐ担任に相談してほしい、と早い段階でお伝えするようにしています。たとえば4月の家庭訪問のときとか。私たちにも見えていないことがたくさんあると思うので、どんな小さいことでも教えてください、と保護者の方々にはお願いしています。そうすると保護者の方も『連絡していいって言ってたし』という感じでわりと気軽に電話をくださったりします」


さまざまな家庭と接してきたナカシマさんいわく、何かしら困りごとや問題を抱えていた家庭ほど、後々になっても覚えているものだそうです。またそういう家庭ほど、再会したときにはあちらから声をかけてくれたりして、ご縁が続くこともあるとか。


「過去に赴任していた学校の運動会を見に行ったりするのですが、連絡を密に取っていたご家庭ほど、再会するとあちらから声をかけてくれたりするんですよね。『元気そうやん、先生!』みたいな感じで、昔ちょっとやんちゃだった方のノリで声をかけてくださったりして。お元気そうな姿を見て、『あぁよかった、またご家族そろって過ごしてるんだな』と思ったりします。教員と保護者って、基本的には1年間のお付き合いなんです。それ以外の5年間は、もしかしたら関わることがないかもしれない。でもそのたった1年間の出来事をずっと覚えていてくださって、思い出として語ってくれたりすると、こちらもすごくうれしいですね」

子育てをするようになってから、教員と親はチームだという思いを強くしています。


「さっきお話しした5児のお母さんとのエピソードなのですが、私が産休に入るときに『先生、これからママ頑張ってね』と声をかけてくださったんです。最後に産休に入るときに、お母さんのほうからそんな言葉をかけてくださったのがすごく嬉しくて。自分で子育てをしてみて思うのは、やっぱり教員と親はチームだということです。いま私は育児休業中ですが、これから復職して保護者の方々にお目にかかったら、同志感があふれてくるような気がしています。育てている子どもの年齢は違っても、分かりあえる部分はきっとたくさんあると思います」


ママのごきげんが世界を救う

子育ての同志であるママたちへ、最後にナカシマさんからメッセージをいただきました。


「子育て中のママさんたちには、一緒に頑張りましょうとお伝えしたいです。私自身、子育てにまつわる負の感情を表に出してはいけないと思っていた時期もありましたけど、そういう部分もひっくるめて子育てなんですよね。子育てを通してそういう感情を経験することで、親自身も育っていきますし、無条件に磨かれていきます。そして知らず知らずのうちに人生全体がアップデートされていると思います。ときどき子育てはキャリアの中断みたいに言われたりすることもありますけど、そういう意味では中断なんて思わなくていいと思いますし。あと、母親の責任みたいなものもひとりで抱え込む必要もないと思います。いろんな支援策やサービスを活用して、自分が一番ハッピーになれる状態を作ってほしいです。サービスの案内文などを読んで壁を感じる方もいるかもしれませんが、もう気にせず! 私も最初はいろんなサービスを利用することに対して迷いがありましたけど、今は頼れるところはお願いして、孤育てを脱出して! と思っています。ママ自身が本来の自分でいられる時間を作って、ハッピーに子育てと自分の人生を楽しんでほしいです。頑張っているママを応援していない子はいないですよ。そしてごきげんなママが大好きなはず!『ママのごきげんが世界を救う』、そう思っています


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